黒雲母 biotite K(Mg,Fe)3[(Al,Fe3+)Si3O10](OH,F)2 [戻る

※鉄に乏しいものは金雲母 phlogopite KMg3(AlSi3O10)(OH,F)2

単斜晶系  二軸性(−)2Vx=0〜25°,α=1.565〜1.625,β≒γ=1.605〜1.696,γ-α=0.040〜0.071 屈折率・干渉色ともに鉄に富むと大きくなる。

色・多色性/普通は淡褐色〜濃褐色の強い多色性がある(X´=淡色,Z´=濃色)。
Z´の色で見ると,著量のTiを含むものは赤みが強い濃褐色で多色性が特に顕著。ややFe3+を含むものは緑色がかりカーキ色で酸化緑泥石(干渉色が高い)と紛らわしい。特にFe3+に富むものは緑色が強く,バーミキュライト・鉄に富むスメクタイトなどと紛らわしい。なお,普通の緑泥石とは黒雲母が干渉色が高いことで区別できる。Feに乏しい金雲母は無色〜淡褐色で多色性がやや弱く,屈折率が低く,輪郭やへき開線はあまりはっきりしないことが多い。




形態/板状の形態でそれの断面が1方向に伸びたように見えることが多く,伸び方向にへき開が発達する。


へき開/1方向(板状の面)にきわめて完全。
消光角/へき開・伸び方向に対し直消光
伸長/


双晶
/偏光顕微鏡では認めらない。

累帯構造/あまり見られないが,時に平行ニコル下で,(0 0 1)の積み重なり方向に,Fe⇔Mg,Al⇔Fe3+,Fe⇔Tiなどの置換による色の違いで認められることがある。

産状

普通角閃石同様,Z´の色は低温生成のものほどFe3+に富み緑色が強い傾向がある。

通常の淡褐色〜濃褐色のものは花崗岩・閃緑岩・流紋岩・片麻岩などに見られるが,花崗岩中のものは緑色系のものもしばしばあり,褐色種と累帯構造をなすこともある。Tiに富む赤褐色のものはアルカリ岩類,ホルンフェルス,キンバレー岩などに見られる。火山岩中のものは褐色〜赤褐色のものが多く結晶周囲が磁鉄鉱や赤鉄鉱などの微粒子に酸化変質していることが多い(オパサイト)。結晶片岩中のものはやや緑色がかった褐色(カーキ色)のものが多く,光学性ではスチルプノメレンとは区別困難だが,スチルプノメレンよりも高温の変成作用ででき,緑色片岩相の岩石にはあまり出現しないことが判別の手掛かりになる(XRDでは底面反射の違いで判別容易)。
無色〜淡黄褐色の多色性の淡色の金雲母はFeに乏しい金雲母はドロマイトスカルンやドロマイト起源の石灰質片岩に,スピネル,かんらん石,透輝石などと共にしばしば見られ,無色に近いものは一見,白雲母に似るが光軸角がやや狭いのでアイソジャイアーで区別できる。



黒雲母の多色性(平行ニコル 安山岩中)
淡黄〜濃褐色。多色性の程度は強い。なお,火山岩中ではこのように板状結晶の断面である短冊状の形態が多い。なお,火山岩では周囲が黒色不透明な酸化鉄鉱物に変化していることも多い(オパサイト化)。


花こう岩中の黒雲母
Bt:黒雲母,Pl:斜長石,Qz:石英,Af:アルカリ長石,Chl:緑泥石

深成岩中でも黒雲母は短冊状に近い半自形をなすことが多い。しかし火山岩中のものとは異なり,自家変質作用で周囲やへき開に沿い,緑色の緑泥石になっていることもある。クロスニコルでは黒雲母は干渉色が3〜4次に達し,虹色に見える。一方,緑泥石の干渉色は1次の灰色程度だが,このように暗褐色の異常干渉色を示すことが少なくない。



結晶片岩中の黒雲母 (平行ニコル)
Bt:黒雲母,Qz+Fs:石英と長石類,Ms:白雲母,St:十字石,Am:角閃石

結晶片岩中のものは火成岩のものよりやや低温ででき,このようにややFe3+を含むため,やや緑色を帯びたカーキ色のことが多い。

             

泥質ホルンフェルス中の黒雲母 (左:平行ニコル,右:クロスニコル)
泥岩から変化したホルンフェルスが肉眼でやや褐色を帯びて見えるのは,このように微細な黒雲母を多く含むためである。黒雲母は褐色で微細な小片で散在している。


接触変成作用を受けた流紋岩類に生じた黒雲母
Bt:黒雲母,Qz:石英,Kf:アルカリ長石,Mt:磁鉄鉱

流紋岩はもともとは有色鉱物として普通角閃石・やや鉄に富む斜方輝石を含む場合がある。それが後に接触変成作用を受けると,それらは細かい黒雲母の集合体に交代されることがある。このような接触変成作用でできた黒雲母はやや3価のFeに富む緑色を帯びたカーキ色の微細片集合体で,その集合体は上画像中央のように不明瞭ながら元の普通角閃石や斜方輝石の外形を示していることがある。
また,その接触変成作用で元の石基部分の火山ガラスは上画像のように微細な長石類や石英に変化している(脱はり化)。
このような流紋岩類などの火成岩は,別の火成岩による接触変成を受けてもその変成の痕跡は肉眼ではわからず,このように偏光顕微鏡でわかることが多い。中国地方〜中部地方にかけての8000万〜1億年前の流紋岩類はそれよりわずかに新しい,同起源の花こう岩マグマ(流紋岩類の下部の花こう岩)により,このような接触変成作用を受けていることが少なくない。



閃長岩中の黒雲母 (平行ニコル)
Mt:磁鉄鉱
アルカリ深成岩(閃長岩やエセックス岩)に含まれる黒雲母はこのように著量のTiを含み赤味が強い濃褐色で,淡黄色に至る多色性が特に顕著である(X´=淡黄色,Z´=濃褐色)。また,これと共生する普通輝石も数wt%のTiO2を含むチタン普通輝石のことが多くで,それは紫赤色を帯び,褐紫〜淡赤紫色の明瞭な多色性を示す。